妊娠にまつわるウソ!ホント!

私は東京青山にあるアキュラ鍼灸院で不妊専門の鍼灸院を開業しております。開業して15年目を迎えようとしており、2,000人以上の患者さんを妊娠へ導いてきました。

鍼灸院を訪れる患者さんの多くは病院やクリニックを訪れ、思うような結果がでないため来院される方々です。体外受精を10回以上行っているかたも結構多くいらっしゃいます。

治療をする際、患者さんの食生活、性生活、運動、睡眠などライフスタイルなどについてお聞きしますが、なかなか妊娠できないカップル・不妊になりやすいカップルは間違った思い込みや勘違いで実は妊娠からとおざかることをしたりしていることがとても多いです。

例えば、精子は出来るだけ溜めるなど、禁欲期間を設けたほうが妊娠しやすいと思っているカップルは多いと思いますが、実はこれは間違った情報です。時たま、そのように産科・婦人科のドクターから指導されて来院される方もいます。

間違った情報や思い込みはあなたを妊娠から遠ざけてしまいます。

妊娠にまつわるうそ!ほんと!をいくつかまとめましたので、ご案内します。

1.精子は溜めたほうが良い

これは誤った情報です。

WHO(世界保健機構)では精液検査ガイドラインに際しての禁欲期間を2~7日間にするという記載をしています。 このため、一般には数日の禁欲期間(精子を溜める期間)を設けて、精液を提出していただくように指導していることが多いようです。それが一発狙い(排卵日に1回のみのセックス)の温床になっているのではないかと思っています。

しかし現在では、様々な論文から禁欲期間を18時間~30時間と設定したときが精子のDNA損傷や奇形率などの危険性を最も避けられると言われています。 精子は溜めず、できれば2日に1回は射精するのが精液の質を保つためには良いとされています。

参考文献: Relationship between the duration of sexual abstinence and semen quality: analysis of 9,489 semen samples, Fertil Steril. 2005 Jun;83(6):1680-6.

2.セックスのタイミングは排卵検査薬の色が一番濃くなった時

これは誤った情報です。

排卵検査薬は尿中に放出されるLHホルモンを測定しています。一般にはLHサージのピークから24時間~36時間後に排卵すると言われています。LHサージがピークに達すると検査薬の陽性反応は一番濃くなり、それからまた徐々に薄く変化していきます。

多くの人は一番濃くなるまで何度も計り、濃くなった時点でタイミングを合わせようとします。しかし、排卵検査薬を何度も使用してピークを特定することに何の意味もありませんし、この使用法では誤ったタイミングの合わせ方となってしまいます。うっすらと陽性がでたら、それがタイミングをとる合図です。そこから1日おき、できれば3回から4回、タイミングをとりましょう。

最近、PCO(多嚢胞性卵巣症候群)の人が増えています。PCOの場合、濃い陽性反応が数日に渡って続くことがあります。こういった症状が見られた際は排卵障害の可能性もあるので産婦人科医の診察を受けることをお勧めします。

3.排卵後のセックスは無意味?

妊娠成立後、妊娠の継続を可能にするには免疫の働きが関与してきます。なぜかというと、人の免疫は非自己のものに対して排除しようとする働きがあるからです。

妊娠とは新たな生物が体内に宿ることを意味しますので「寄生」といっても過言ではありません。非自己の生物が母体から栄養を吸収して驚異的なスピードで大きくなるわけですから、免疫機能としては排除すべき存在と認識しても何ら不思議ではないのですね。不育症の人はこの免疫が過剰反応を起こして妊娠を中断させてしまいます。

では、これらを避けるためにはどうすればいいのでしょうか?

まず、重要な考え方として覚えておいてほしいのが「免疫寛容」です。免疫寛容とは具体的に言うと自己を攻撃しないようにする免疫コントロールの一種ですが、この免疫抑制を排卵後のセックスで実現することができます。よく、「排卵後のセックスは意味がない」と言われますが、実は子宮内膜が精液へ暴露されることによってそれが免疫寛容へと繋がり着床が促進される可能性があることが様々な論文で指摘されています。着床促進に関与している調節性T細胞(Treg = CD4+CD25+Foxp3 T細胞)は移植や妊娠などの際に、臓器や胎児が拒絶されないために(免疫寛容)働いている免疫細胞です。これは精液へ内膜が暴露されることにより増殖しますので、人工授精や体外受精の周期のセックスでも意義があると言えるのです。つまり排卵後のセックスは妊娠を継続させる上で非常に効果を発揮するということなのです。

参考文献:Regulatory T-cells and immune tolerance in pregnancy: a new target for infertility treatment? Hum Reprod Update. 2009 Sep-Oct;15(5):517-35.

4.排卵日にHすると一番妊娠しやすい。Hのあと、3分間逆立ちすると妊娠しやすい

これはどちらも誤りです。

精子の受精能力は射精してから5日間、卵子は排卵してから24時間。この間に精子と卵子が巡り合うことで受精が成立します。卵子の受精能力期間は精子と比べると短いので、卵子が元気な間に精子と合体することがベスト。理想は精子が卵子の排卵を待ち伏せする状態です。そう、ストーカー作戦がもっとも妊娠する確率が高くなります。

精子は射精後、5〜45分で卵管に到達し、卵管膨大部に集まります。また、精子は泳いで卵子に到達するのではなく、流れに乗って卵子に到達します。その際、子宮の収縮、卵管の収縮、卵管繊毛の働きが必要不可欠です。

逆立ちをしようがしまいが、健康で妊娠力(子宮の収縮、卵管の収縮、卵管繊毛の働き)がきちんと発揮されていれば、精子の状態が少しぐらい悪くても、妊娠は成立するのです。

参考文献:Sperm transport from the external cervical os to the fallopian tubes in women: a time and quantitation study. Fertil Steril. 1973 Sep;24(9):655-61.

5.子宮を温めれば妊娠しやすくなる

これは私の個人的な意見ですが、カイロなどで温めたところで、皮下脂肪を超えて子宮が温まることはありません。皮膚体温と深部体温に人の体温は分けられますが平熱が35度前後と低い人でも深部体温はそれより1、2度は高いです。深部体温が下がると、カラダがブルブルして、カラダは熱を発生させ、深部体温を上げようとします。『なんとなく温めると血液の循環が良くなって、妊娠しやすくなるような気分になる。』そういうイメージはあるようですが、子宮は温まりません。

むしろそれを無理にやって、それが不快やストレスの原因となっては本末転倒。温めるのであれば、末梢(手足)が冷えないようにまずしましょう。

手足を温めると自律神経が調整され、リラックス効果が高まります。良く寝付けない子供の手足が冷たかったりした場合、温めてあげるとすぐに眠りについたりします。そんな感覚で、「気持ち良い」を基準に温めてください。

真夏に毛糸のパンツとお腹の携帯カイロはいくらなんでもやり過ぎだと思います。快適な妊活が大切です。

徐 大兼

徐 大兼
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●アキュラ鍼灸院 ファティリティーウェルネス 院長
●アルメディカ株式会社 代表取締役社長
●プレママプラス考案者
●日本不妊カウンセリング学会 認定 不妊カウンセラー

【略歴】
鍼灸師・日本不妊カウンセリング学会 認定不妊カウンセラー。
東京・青山の不妊治療専門「アキュラ鍼灸院」院長。
地域のドクターと連携し、ベストな治療計画を提案している。
現在は不妊鍼灸ネットワークを設立するなど、不妊鍼灸の啓蒙活動を極的に行っている。 また、養生・食育をベースに、オリジナルサプリメントやお灸の開発にも取り組んでいる。
著書に『カラダを温めれば不妊は治る!』があるほか、生活総合情報サイト「All About」にて不妊治療・東洋医学ガイドを務める。


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